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釣りの小話.16【怖いもの】

山へ海へと走りまわる釣り師には常に危険がつきまとうものだ

「危ない目にあった」

聞けばある友人は増水の渓流でバランスを崩し、下の淵まで流されたといい、
またある友人は熊に数回遭遇しており、その体験を話してくれた
よく耳にする噂を実際に支笏湖で味わった友人の話は、私の持つ人並みの臆病風を強風の域にまで拡大させた


無茶を無茶だと思わない無謀者の私は、熊の痕跡などは気にもせず釣りを続け、岩盤にへばりつき増水の渓を何度も遡行した

このての人間は実際に痛い目にあわないと分からない性分なのだ

そしてある日、痛い目は満を持して私の下にやって来た

つい最近、十勝からの帰り道での出来事だ
晩秋から初冬に移り変わる、そんな季節だった
霧の峠を慎重に下り、国道へ合流すべく車を走らせていた時だ

完全に油断だった

すぐ前方に大きな鹿が見えたと思った時には既に遅く、右に急ハンドルをきるのが精一杯だった

キィーとタイヤの鳴る音、そしてドゴンと衝撃音が響いた

とっさに右に飛んだ鹿との正面衝突だった

車を停め振り返ると鹿の姿は見えず、代わりにフォグランブがひとつ道に転がっている…
恐る恐る車のフロント部をのぞき込む
ボンネットはくの字に折れ、左側が砕けたバンパーを目で追うとフェンダーからドアまで衝撃が走ったことがはっきりと確認できた

30万コースといったところか

ほんの1、2秒気がつくのが早ければ回避できたのかもしれない

それからというもの、しばらくの間は道端の木々がどれも鹿に見えてしょうがなかった

そんな訳で、熊、お化けの上位を抜き、山道の運転が何より怖いものとなってしまった話である


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by kaki1225h | 2015-11-10 21:58 | Comments(0)

釣りの小話.12【声】


友人から聞いた話だ

彼とは中学時代からの付き合いで、20年以上経った今でも互いにスケジュールを合わせて釣りに出かけたりする。
彼とは同じ職場では無い為、一緒に釣りに行くのは年に数回ほどなのだが、その分 道中の車内での会話は途切れることはなかった。

ある湖の話になった時に彼はこんな話を始めた


夕闇迫る湖水、
いつもなら釣り人の一人や二人はいる時間帯なのだが、周りを見ると自分1人だけだった。
ここは有名な湖のメジャーなポイントだ、普通なら幸運と考えるに違いない。
だが何か嫌な感覚があったという。
もしかしたら気のせいかもしれない…だが背後から確かにザワザワと気配がする

この場所は背後にある崖が急な角度で湖にささっている。いくぶん角度の緩い水辺の岩場が足場になる釣り場だ。

今の状況が普通ではないと感じた彼は、早々に帰る準備をした。
背後のざわめきはまだ消えていない…
ただならぬ気配に動揺したのか、彼はたまらず『もう帰る』と呟いた。
怖さを紛らわす独り言だったのだろう。
だがそれは、独り言では終わらなかった。
その直後、彼の耳元で…本当にすぐ耳元で、それは聞こえた

『 もう 帰るの? 』

女性の声だったという。

私もホームにしている湖の話だ。
聞かなきゃよかった、いや同じ目に遭わない為には聞いたほうがよかったのか

それ以来、この湖でのイブニングには深入り出来ずにいる


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by kaki1225h | 2014-08-09 23:32 | Comments(0)

釣りの小話.10【彷徨う人影】

告白しよう。私は方向音痴である
それもヘビィがつく程の

普段、ナビに頼りきってるのが悪いのか…友人の車で行く初めての釣り場、帰りの運転は私が引き受ける
『さぁ帰りますか』と左ウィンカー
『…右だよ』
ということがあったのは1度だけではない

以前はこんな事もあった

季節は秋
道東の渓流を釣り上がり、終了地点の橋が上流に見えてきた
辺りはもう薄暗くなってきている
橋への斜面を登り車へと向かった
イブニング用のライトは持って来ていない
夕闇迫る山深い道を早足で進んだ

20分ほど歩き異変に気が付く

本当にこっちでいいのだろうか…

山道なのだから多少のアップダウンはある、だがアップが多い気がする

まさか…

いや、もう少し歩いてみよう



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その夜、すっかり日が暮れた道東の山道で、明かりも持たずに彷徨うひとりの人影があったという…


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by kaki1225h | 2011-05-12 03:10 | Comments(0)

釣りの小話.8【支笏湖.釣れない理由】

支笏湖で釣れない日々が続いていた
この湖に通い出すと、決まってフライの補充に追われる

ある夜のことだ。
支笏湖で活躍する3つのパターンを巻き終え、後はヘッドセメントの乾燥を待つだけだった
デスクの上にはウーリーバーガー、マドラーゾンカー、そしてヴィッグルバーガーが並んでいる

…なにやら話し声が聞こえた気がした

耳をすます

どうやら話し声はデスクの上からのようだ。


ウーリーが言う
「 この中で1番でかい魚をかけたのは俺だな。特に夜明け前の岸際にいたゴールドのブラは… 」

マドラーが返す
「 俺は強風に向かって飛んでいき、高波の中を泳いで3匹だぜ 」

ヴィッグルも黙っていなかった
「 俺のビーズヘッドは勝負が早いよ、あんたらには真似できない縦の動きが… 」


夜は更けていった


翌日の支笏湖は波、風ともに申し分ない状況だった
だが、朝まで激しい討論を続けたフライ達には、もう鱒を釣る力は残っていなかった…

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by kaki1225h | 2011-04-23 20:42

釣りの小話.6【オン ルーフ】

うっかり者の私は、度々同じミスを繰り返してしまう

車の屋根に釣り道具を置き、そのまま走行した事が過去に3回あった

1度目は…
その日の釣りが終わり車に戻ると、私はまずロッドをルーフに乗せた。
帰り支度を済ませ、車を走らせる…

あっ!

すぐ停車しルーフを見るが、ロッドは無い…
当たり前だ、かれこれ30分は走ったのだ。
あわてて来た道を引き返し、道路に横たわるロッドを見つけた。
恐る恐る近づく…
手に取り、持ち上げた8番のロッドは私の不安を裏切ること無く、根元からクシャと曲がってみせた
このロッドの生涯で最大級の曲がり具合だった

2度目は…
走ってすぐに気が付き、事なきを得る。
軽いロッドだけではなく、リールがついてた事が幸いしたのだろう

そして3度目…
今回、屋根に乗ったのはリール単独だ。
釣り場からの帰路、峠をひとつ越えたガソリンスタンドで、それは発覚した。

屋根に何か乗ってますよ

手渡されたのはリール…
その時は早く帰りたい気持ちから、かなりとばしていた。ここまでの道中 何台の車を追い越したことか…
車の屋根の両サイドに装着されたルーフレールがいい仕事をしたようだ。ただの飾りではないという事だ
多少の傷のみで生還したラムソンのリールは、今も現役である。


過去3度にわたるルーフ置き去り事件
4度目はまだ起きていない、今のところは…

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by kaki1225h | 2010-11-30 13:57

釣りの小話.5【カウンターアソールト】


熊撃退スプレーなるものを購入し数年がたつ

過去に2回だけ発射したことがあった

1度目は購入後の試し撃ち

2度目は…



真夏の道南、イワナ釣りの時だった。

釣りを終えて川から上がり、車へ向かって林道を歩いていた。
腰に付けられたカウンターアソールト、何かの本で読んだことがある。安全ピンは外しておかないと、至近距離の事態では間に合わない…と。

しばらく歩き、車が見えてきた。
鍵を取り出そうと、ウェーダーの中のポケットを探る。
なかなか鍵が掴めない…
少し屈んだ体勢になった時だった…

ぼふっ!!

発射音に友人がビクッとしたのがみえた。
自分は…黄色い煙の中だった。

被弾したのは腰だったが、身に付けていた物は後日全て処分するに至ったほどの破壊力だった。
友人に発射しなくてよかったと心の底から思う。

岩魚の谷に響いた発射音は今でも耳に残っている
カウンターアソールト、真夏の誤射事件であった


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by kaki1225h | 2009-01-15 22:41 | Comments(0)