タグ:渓流 ( 2 ) タグの人気記事

2017.7.15 45回目の夏

夏の日の休日、夏らしい釣りをしようと川の上流域へ車を走らせた。思えば自分の釣りは寒風に吹かれながら凍えた指先でリトリーブ…そんなことばかりをやってきた気がするので、夏の釣りをもっと楽しんでみようと思う。

e0363490_22112731.jpg



崩れた林道は途中で通行止め、そこからは車を乗り捨て、歩きだ。林道は大破してたけど、渓相は思ったほど荒れてはいない。頭の上から足の先まで汗だくになるのは夏の釣りならではだと感じるし、顔の周りにしつこくまとわりつく蚊や羽虫を払うことにもさえ夏を感じている。
例年、鱒がついている1級ポイントに大きなドライフライを浮かべていく。3Xリーダーにティペットは4Xだ。太っ!と驚かれることもあるが最近では2Xリーダーに3Xティペットでもいいかなと本気で考えている。
ふたつめの1級ポイントにさしかかった時、牛のような鳴き声が続けて2回耳に入る。先程、釣り上がってきた下流の方からだ。そう言えば動物園のような匂いがしてたっけ。友人の話を思い出す…この川で釣りをしていたら上流を大きな熊が横切っていったと。近くに牧場なんてないし、もしかしたら林道を走る車の走行音か、遠くで雷が鳴った音かも…いろいろ考えてみるけど通行止めと青空がそれは違うと言っている。熊だと考えて行動するのがベストだろう。だけど車は下流で、鳴き声は林道側から聞こえてきたから、その林道にあがるまでの長い長い藪こぎはちょっと怖い。出た結論はそのまま釣り上がる、ペースをあげて、だった。目の前のポイントに止せばいいのに2投だけして、こんな時に限って出た鱒には逃げられて、そそくさと上流へ歩を進めた。
川底の石に足を取られながらしばらく歩き、水深のあるとろっとした流れに辿り着く。現金なものでそんなポイントを前にするともう熊の心配は頭の片隅に追いやっていた。

e0363490_22425957.jpg


出てくる鱒は川底の岩盤に同化したように白っぽい背中をしている、この川ならではの岩魚だ。40~45がここでのアベレージで、時には50台も水面を割って出る。そんな大鱒はあと一息のところでスポッとフックが外れてしまって天を仰いだり、ティペットが切れてしまい膝から崩れ落ちたり…ことごとく鱒に軍配があがってしまった。フライがついたまま逃げた鱒はフックがバーブレスだったのがせめてもの救いだ。早くに外れてくれることを切に願う。

e0363490_22095227.jpg


40歳を過ぎたあたりから、釣りに出かけた時の疲労が数日は抜けなくなった。最近では釣りの最中に言うことを聞かないパーツが増えてきて弱気になってくる。職場の健康診断では必ず一つ二つは要注意だとか要検査の欄に記号がついてくるし…。今では世間の悪者扱いになっている煙草も止めれないのにこんな事を思うのは勝手だけど、せめて子供達が親に頼らなくなる年齢になるまでは、この体よもってくれと切に願う。
そしてやっぱり帰りの運転中に脚がつりそうになり、休憩を2回とった。そんな45回目の夏が過ぎようとしている。


[PR]
by kaki1225h | 2017-07-15 23:20 | Comments(6)

2017.7.9 幽谷で過ごした夏の日

夜のうちに道の駅に車を滑りませた。大岩魚の幽谷を訪れるのは2年振り。眠りに落ちる前、まぶたの奥深くで懐かしい風景が浮かんでは消えていく…  森の色を映しこんだ流れはキラキラした瀬になったり、グリーン色の淵になったり、時には岩盤にぶつかり大きくその向きを変えたり…。昔の人はよく人生を川の流れに例えたようだけど、もしそうなら愛しい子供達はきっと源流部の不純物のない澄んだ流れなのだと思う。一方で自分はまもなく海が近づいてきているあたりになるのだろうか…。濁りもあればゴミの二つ三つも浮いているのかもしれない。薄れていく意識の中で波の音がザザーンと寄せて返した。

e0363490_14531043.jpg


夏。ただでさえ短い夏シーズンの中で、釣りに来れるのは僅か数日なのだろう…10回位か、もしかしたら2~3日かもしれない。そんな事を考えると、夏を全身で感じたいと思う。燃えるような太陽を、心地良いそよ風を、うだるような暑さもだ。だけど、首の後ろや鼻の頭が日に焼けてジリジリ痛むのは嫌だから、かみさんの日焼け止めクリームをこっそり塗り塗りしてきた。なにやら高価そうだったので、ばれないようにこっそりとだ。
早朝。道路脇の駐車スペースから谷を見下ろし、その変貌に驚く。昨年の相次ぐ台風による痕跡なのだろうか、川に覆い被さる木々は無くなっており、淵は消えていた。本来は道路にあるべきの標識らしきものが岩盤の上に横たわっている。岩盤に挟まれた渓谷なのだから氾濫した流れは周辺全てを押し流したのだろう。しばらく釣り進むと橋の一部が斜面の中腹に引っ掛かっている。終了地点にしていた小さな橋が見えた、予想通り柱だけだったけど。
大岩魚達が潜むような流れはひとつも残ってなく、ちょっとした深みでは、小さな岩魚が大きすぎるフライを争うように追う姿があるだけだった。ほとんど人の手が入っていない渓谷なのだから、壊れては再生し、を繰り返してきたのだろう、長い長い年月をかけて。
宝物をひとつ失ったような喪失感をようやく受け入れると、これまでの感謝の気持ちが溢れてきて、訳もなく橋の柱をポンポンと2回たたいた。


[PR]
by kaki1225h | 2017-07-09 14:55 | Comments(0)